子どもに言うことを聞かせるにはどうしたらいいの?【小学校低学年 男の子編】

子どもに言うことを聞かせるにはどうしたらいいの?

親の言うことを子どもがなかなか聞かず困っている保護者の方は多いのではないでしょうか。親からすれば将来社会に出たときに苦労しないようにと、子どもに対する愛情からくる注意だったとしても、子どもからすれば実際社会に出たり親になったりしないとその言葉の本質は分かりません。そこで、少しでも親子関係を円滑にすすめていただくために、私が普段生徒とどのように関わっているか参考にしていただければと思います。今回は第1弾として、小学生低学年の男の子をお子様に持つ方向けのお話をさせていただきます。今後、様々なケースを想定して事例を紹介できればと考えています。

【小学校低学年 男の子編】 ~男の子と女の子では内面的な成長速度が違う~

小学生のお子様をお持ちのお母さまの中で、特に男の子の扱いに困っている方が多いのではないでしょうか。上にお姉さんがいる場合や年の近い妹がいる家庭なら、なおさら女の子とのギャップで子育てのやりづらさを感じてしまうかもしれません。私が子どもを見てきて感じることは、男の子と女の子は肉体的な成長速度の差以上に内面的な成長速度の差が大きいということです。女の子の場合、ほとんどの子どもが小学生に入学する頃にはしっかり自我が芽生え物事の善悪が判断できます。それに対して男の子の場合は、小学3・4年生ぐらいにやっと物事の善悪がしっかり理解できるようになる場合が多いです。よく私は、小学校低学年の男の子のお子様がいる保護者の方に、「小学3年生までは男の子は昆虫と一緒ですから、女性であるお母様が子どもの気持ちを理解しようと思ってもできないですよ。」とお伝えします。そして、昆虫の中でも特にカブトムシを例えに出すととても共感していただけます。カブトムシはいつも、勝手に木に登ったと思えば勝手に落下して勝手に裏返ってもがいています。その行動の理由を我々は理解できません。なぜなら、本能の赴くままに彼らは自分のやりたいように行動しているだけだからです。つまり、低学年の男の子もそれと同じで自分の行動に理由付けをする前に、本能のまま行動に移してしまいがちなのです。その結果、お母様の理解を超えるような行動を起こし、うちの子は大丈夫かしらと不安になるのです。

それでは、そういった子どもにどうやって言うことを聞かせればいいのかという問題が出てきますが、もし無理やり言動を変えさせようとすると、子どもにとっても保護者にとっても大きなストレスになってしまいます。なぜなら、子どもからすれば何で注意されるかの理由がよく理解できず混乱しますし、親からすれば何で何回言っても分かってくれないのだろうと注意がどんどんエスカレートしていきます。その結果、子と親との間に大きな溝ができてしまうといった最悪の事態になる可能性もあります。

そうならないためにも、子どもと関わる際「点」で物事の善悪を判断せず「面」で判断することをおすすめします。つまり、その言動が他人に悪影響を与えているかどうかで判断するということです。例えば、我々の塾でも実際に小学低学年の男の子が通塾していますが、授業中に集中力が続かないことや授業中に大きな声で質問してしまうことなど、中学生や高校生であれば必ず注意しなければならないことでもそれをしません。しかし、授業中出歩いてしまうことや他の生徒に話しかけてしまうことなどは注意します。また、忘れ物をしてしまった場合でも他人に迷惑をかけているわけではないわけですから、笑顔で塾にあるものを貸してあげます。ここまでは「O.K」でこれは「OUT」といった境界線をしっかり設けることでルールを学べ、また、その線を超えない限りは大丈夫だという安心感を与えることで何事にも臆することなく積極的に取り組むようになっていきます。

これを子と親で例えるなら、公園で遊ぶ子どもを見る保護者に置き換えるとさらに分かりやすいかもしれません。子どもが滑り台で遊んでいる際、普通に滑るのではなく逆から登っていたとすると皆さんならどうしますか。その場合、次の2つのケースによって声掛けは変わってくると思います。1つ目のケースとして誰も他に滑り台を利用していない場合、あまりにも無茶なことをしない限り特に危険はありませんから「O.K」です。また、もう1つのケースは他にも滑り台で遊んでいる子どもがいる場合、下から登っていくことは危険です。自分の子どもが怪我しなくても他人を怪我させてしまう可能性が出てきますので「OUT」です。そんな場合に初めて、「他の子がいるときはみんなで順番に同じ方向に滑るのがルールなんだよ。」と言ってあげれば、下から登ることが悪いことではなくみんなで楽しく遊ぶためにはルールが必要なのだと認識できるようになるのです。滑り台は上から下に滑るものだと決めたのは大人ですから、子どもからすれば下から上に登って行った方が達成感を得られるのかもしれませんし、その子なりに考えた滑り台の正しい遊び方がそうなのかもしれません。ここで注意してしまうと、何で今自分が怒られているのかその子は理解できませんよね。

いかがでしたでしょうか。ちょっとした差の中にも大きな結果の違いが生まれることが分かっていただけたでしょうか。言動一つひとつにアンテナを張るのではなく、許容可能な境界線を設けてあげる。その中でその子の成長を見守ってあげることで保護者の心にも余裕が生まれ、より良い親子関係を築くスタートになると考えています。子どもは親の鏡ですが、決して親の所有物ではありません。どうかその子の欠点ばかりを指摘するのではなく、良いところを見てあげることを心掛けていただけますと幸いです。